1081人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
そのままの雰囲気で、
甘い香りに似合わない静かな時の流れに、
オレたちは身を委ねた。
時折カウンター内から、カチャカチャと食器の鳴る音がするくらいで、BGMも何もない。
それなのに、さっきまでの手持無沙汰だった気分は、スッカリ落ち着いていた。
甘い飲み物は、人を癒す効果があるという。
ならばこれは
ココアの効果、だろうか…。
―――それとも………?
カップに口を付ける瞬間、カップ越しに菜奈ちゃんをチラリと盗み見た。
不意打ちだったのに―…。
何故か合わさってしまった2人の視線に
フワリと菜奈ちゃんは微笑んだ。
それに、
ドクン――…。
と胸が高鳴ったのは、間違いなくて。
恥ずかしくも思った言葉は
―――あまい。
大の大人の男が考えるような言葉じゃないなんてことは、重々分かっている。
そんな恥ずかしい言葉を思いついてしまったのは、きっとこの嗅ぎ慣れないココアの香りのせいだと決めつけて
残っていたココアを、一気に飲み干した。
。
最初のコメントを投稿しよう!