first secret

8/13

1081人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
そのままの雰囲気で、 甘い香りに似合わない静かな時の流れに、 オレたちは身を委ねた。 時折カウンター内から、カチャカチャと食器の鳴る音がするくらいで、BGMも何もない。 それなのに、さっきまでの手持無沙汰だった気分は、スッカリ落ち着いていた。 甘い飲み物は、人を癒す効果があるという。 ならばこれは ココアの効果、だろうか…。 ―――それとも………? カップに口を付ける瞬間、カップ越しに菜奈ちゃんをチラリと盗み見た。 不意打ちだったのに―…。 何故か合わさってしまった2人の視線に フワリと菜奈ちゃんは微笑んだ。 それに、 ドクン――…。 と胸が高鳴ったのは、間違いなくて。 恥ずかしくも思った言葉は ―――あまい。 大の大人の男が考えるような言葉じゃないなんてことは、重々分かっている。 そんな恥ずかしい言葉を思いついてしまったのは、きっとこの嗅ぎ慣れないココアの香りのせいだと決めつけて 残っていたココアを、一気に飲み干した。 。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1081人が本棚に入れています
本棚に追加