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しかし、これだけ偉そうに怒鳴ってみせたって。
どうせオレが姉貴に勝てる日なんて、一生来ないんだろうけどな(笑)
「そういえば会長から伝言があったんだ」
既に扉が半分開いた状態で、最後に姉貴はオレに振り返った。
「親父から?」
オレに社長の座をさっさと譲って、会長に就任した親父。
よっぽどの事がない限り口を出してこない親父が、珍しく一体何の用だ?
「今夜、早めに実家に帰るように、ってさ」
社長に就任したのをキッカケに、オレは実家を出て、会社近くの高層マンションで一人暮らしをしていた。
姉貴は婿養子で現専務の義兄ともども、今も実家で暮らしている。
「わかった…」
親父からの伝言を不可思議に頭の片隅に思いながらも、返事をし
バタン、と扉が閉まったのと同時、オレはもう一度、頭を抱え込んだ。
その瞬間。さっきまでのことを全てを忘れたように脳裏に浮かぶ菜奈の容姿。
茶色いふわふわの長い髪に
幼さの残る笑顔。
小さな体を色づかせる白い手足。
甘ったるい言葉使い。
正直、夢の内容なんて細かく覚えてないけど
自分を悩ませるのには、十分なほど思い出す菜奈の映像は鮮明だ。
そして現在、PM3:30。
。
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