cannot say

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「仕事が忙しくって…」 というサラリーマンらしい平々凡々な言い訳をしながら、最近オレの定位置に変わったカウンター席に腰かけた。 ってか。 「あれ?マスターは??」 キョロキョロ店内を見渡せど、マスターの姿は見当たらない。 「あ、マスターさんならさっき出掛けましたけど…」 と、当たり前のように菜奈が答える。 (またかよ…) あの日以来。マスターはこんな事が多くなった。 どうやら近所に、マスターの豆仲間が引っ越してきたらしい。 その人は輸入業をしている人で、珍しい豆を手に入れてはマスターを呼びつける。 結果、いつも店内には、オレと菜奈だけ…というわけだ。 そんなこんなで今日も、AROMA の店内には甘い香りが漂っている。 菜奈はいつのまにか、マスターがいない日は、率先してココアを淹れてくれるようになっていた。 オレが、菜奈の淹れるココアを気に入っていると思っているらしい。 もちろん気に入ってなくはないのだが、ただ珈琲を飲みに来てるはずがこうも毎回毎回ココアを飲ませられるのは、少し考え様があるとは思っている。 。
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