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「あれ、マスターは?」
「あっ!…いらっしゃいませ―……あ、あの…あれ?」
明らかにその女の子は、動揺していた。
オレを見て。
茶色いふわふわした長い髪に、白くて少しふっくらした柔らかそうな肌、小柄な身体。大きくて純粋そうな瞳。
年は10代後半…といったところだろうか。
一瞬、知り合いか?とも思ったが、やはり心当たりがない。
しかもAROMAの、この時間の店員は、暇だからいつもマスターだけなはず。
「っていうか、アンタ誰?」
咄嗟に思ったことを直ぐ口に出してしまうのは、オレの昔からの悪い癖だ。
そうとは分かっているけど、なかなか止められるもんじゃないってのも、悪い癖だ。
「あの…菜奈、ここのアルバイトで……」
―――バイト?
こんな客はオレしかいない暇な時間に?
「マスターは?」
「いまちょっと…買い出しに出ています」
「もしかして、留守番?」
「…はい」
そうゆう事か…。
困った、という顔丸出しでモジモジしだす『菜奈』と勝手に名乗った女の子に
「アンタ、珈琲淹れられるの?」
と聞いたら、案の定、黙り込まれた。
これじゃあ留守番の意味ねぇじゃん、マスター―…。
。
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