依頼授業は大変だ

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「なっ……!?」 「皆がお前のペースに合わせて走ってたのに、お前がそんなだったら、見限るからな」 眉間に皺を寄せてベックを睨むデルに、ベックは怒鳴る。 「何だよ偉そうに!何様なんだよ!」 と。 「リーダーは1人の為に皆を危険に晒す訳にいきません。大人ならチームから外されて置いていかれますよ」 頭の上の声に振り返ると、トレムさんが腕組みをしてベックを見ていた。 「学生だからと甘えて過ごし、大人になってからも改められずに他人を巻き込んで命を落としていった者も少なくありません」 続いたトレムさんの言葉に、皆が静かに聞き入る。 「それを避ける為に見捨てる事も多いんですよ」 「そんな……」 ベックが絶望的な顔で呟くと、クランが助け船を出す。 「で、結局どうする?走るか?」 「……走る」 ベックから小さな声が返ってきた。 「よし、じゃあ走るぞ」 デルは何も無かった様に皆に声を掛けて走り出す。 それに続く皆の背中を追い掛けて、ベックも走り始めた。 ヤレヤレ。 デルは結局ベックを見捨てる事は無く、暗くなった道をトレムさんの先導でベックのペースで走り続けた。 僕は最後尾で、強い魔物の気配を感じたら倒しながら、追い掛ける。 そして王都の門に到着したのは夜も大分更けてからだった。 ギルドに到着して報告し、依頼の品を提出すると、待っていたニーグが、ゆっくり休めよ、と皆を寮に転移させた。 僕は残されたけど。 ま、皆はこれで明日以降に、反省文を書いて提出して依頼授業は終了だ。
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