一難 目覚めるとそこは

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「死ねっ!この泥棒猫!!地獄に落ちろ!」 開いた扉の前で、左手には包丁を持った妹が憤怒の形相で、ボクの上に跨っている幼馴染へと言う。 包丁を持っている手がぷるぷると震えている・・・が、それは恐怖ではなく怒りからである。 顔を見れば誰だってわかる。 「あぁ、優くん気持ちいいっ気持ちいいよぉ!!」 そんな妹を知ってか知らずか、無視をして未だプロレスを続ける幼馴染。 オイコラ、無視すんな。せめてちょっとでも反応しろ。 って無視してるんじゃなくて妹に向けてドヤ顔してる・・・だと!?こいつ、やりおる! 「死ね、死ね!殺す!」 そんな幼馴染の様子を見た妹が、右手の包丁を振り上げ終いに襲いかかる。 ・・・え?右手・・・?さっき左手に持ってなかった――二刀流だと!? その包丁が幼馴染の頭に命中するかと思ったその時。 バシッと音がした。 そう、幼馴染は包丁を真剣白羽取りしたのである。 さすがのボクも予想外です。つか、そのドヤ顔止めろ、見てるこっちも鬱陶しい。 しかもまじめなバトルシーンなのに腰振り続けるなよ馬鹿。シリアスだろ!察せよ! 今にでもツッコミを入れたかったが、口には猿轡をはめられていて、両手両足は切り取られている為使えない。 ざけんな。起きたときにはもう両手と両足が無かったとかまじでいらないから、いや本当に。 「優くん優くん、この盛ったメス猫殺していい?」 「うんいいよ」 「やった!ありがとー!」 勿論ボクが「うんいいよ」なんて言うはずが無い。 こいつの一人芝居である。しかも裏声全然ボクの声に似てなかったし。 幼馴染が妹から包丁を取り上げると、それを右手に持ち襲い掛かる。 包丁と包丁がぶつかりあって、金属音が鳴り響く。 おいやめろ。耳が痛いしその音は不快感がはんぱない。ぱないの!まじぱないの!だ。 賠償としてドーナツを奢ってもらいたいくらいである。 「優くん!!よけ――」
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