第一幕

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 たかしが動けるようになったら案内してあげるね、とベルが笑う。 「すっごく広いもん。たかし一人だったら、ぜったい迷子になるよ。でも、ベルがいたら大丈夫だから!」 「ああ、そのときはよろしく頼むよ」  妹がいたら、こんな感じなんだろうか。生憎と、俺は一人っ子だけど。  しかし、アヌリマ国か。  聞いたこともない国名だ。  やはりこの夢は、俺が知る世界とは切り離して考えた方がいいらしい。  いわゆる、異世界か。 「たかし、他にないの?」 「あー……と、じゃあ、いま何時ぐらいだ? 俺は目が見えないから、時間帯が解らなくて」  えっとね、とベルが動く気配がする。時計でも探しているのだろうか。 「風の刻だよ」 「……昼? 夜?」 「夕方かな。そろそろ日がしずむもん。ベルたちの時間になるね」  ええと、以前訊いたときは水の刻が朝、土の刻が夜だったな。となると、残った昼にはまた違う言い方があるのだろうか。  心なしか、ベルは嬉しそうだ。この子が元気じゃなかったときなど俺は知らないが、夜はまた一段と元気になっている気がする。  それもその筈だ。  ──ベルたちの時間。  夜は、彼女たちが支配者と成りうる時間帯らしいから。 「……ベルたちは、人間じゃないんだよな」
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