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時継の妻である禰々や娘の琴姫が住む本丸御殿は淀んで噎せ返るような血の臭いに満ちていた。
彼女らを逃がすためついていた女中の落とした提灯の火が燃え広がる中、気を失った禰々を腕に抱いた時継の姿があった。六道の忍びの骸と欠片となって壁や床に散らばった女中たちが臭いの元で。
片方の膝をつく時継の目の前には琴姫を抱える黒い男、六道の魔王安綱。
娘を返せと激昂する時継、六道に下れという安綱。
火と煙が広がりつつある状況に安綱が動く。
刀の一振りで竜巻状の氣を放つ。しかしそれは時継には届かず、神瞑が身を挺して庇う。
継時はカットなり刺し違えても娘を取り戻してやろうと考えたが、『お前は生きろ』と残して気を失った神瞑の言葉にやりきれない想いが生じて行動に移すのは止め。
『娘はすぐに取り戻してやる。
必ず。…必ずだ』
安綱の背に向かって感情を飲み込んで言葉を紡ぎ、相手が笑い声と共に闇に消えれば天井を仰ぎ。
刀を収め、妻と友を担ぐと燃え落ちる本丸御殿から脱出を図ったのだった。
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