戦いの神の物語

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 戦いを司る神。彼はずっと昔からいた。生命が誕生してから、今日に至るまでずっとだ。おそらく、彼は最初の神だったのかもしれない。  知識ある者は言う。生命には生存本能があり、それが戦いの引き金になると。だが、それは戦いの神によって授けられた意思なのだ。  戦いの神は意地の悪い性格をしていた。生命の神が産み出した生き物たちが争う様をずっと高みで見物してきた。  地上、空、海と様々な場所で争いは起きた。地上には地上の、空には空の、海には海の戦いがあった。昼と夜にも戦いは続いた。戦いというのは途絶えることはない。滞ることなく変化していく様は、まるで万華鏡のようだ。戦いの神は、それが楽しく美しいと思っていた。だから、戦いの神は生き物たちに、もっと、もっと、派手に戦うことを命じた。  今の光景が飽きれば、彗星の一つでも落とせばいい。戦いの神は一度、地上に彗星を落としたことがったあった。その星が原因で、地上の王者であった恐竜たちは絶滅した。野性味溢れる恐竜たちの戦い。迫力はあったが、すぐに飽きてしまった。獣は獣であり、知性などなく粗暴なだけだった。 その後、誕生した生き物たちは目まぐるしい戦いを続けたが、どれも戦いの神を満足させるには至らない。恐竜同士の戦いに比べると、遙かに劣るからだ。  動物たちは本能で分かっていた。この程度では、戦いの神は満足しない。満足しなければ、また彗星を落とされ絶滅させられてしまうと。その本能が、恐竜たちの戦いでは見られなかった変化をもたらした。地上、空、海と分かれていた戦いの場。その境界線が取り払われるようになった。海から地上を襲う魚がいれば、空から海へと急降下し獲物をとる鳥も現れるようになった。世界は争いで満ち溢れ、戦いの神を満足させることができた。
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