五、思い知らされる事実

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永田様は小太刀を手に持って、近寄ってきた。 本気か?! そして、私の首元に小太刀を当てた。 「主の俺に偽り、役目を果たせず逆らった罰は大きいぞ?」 ううっ…。 「いずれにせよ、私はこの世から消されるのでしょ?…ね、永田様?一時が終われば、消されるのでしょ?…奥方様とお子様が戻られたら…私は死をもって、この世から消されてしまうのですよね?…」 永田様は驚いた表情をしたが、何故か苦しそうな顔を浮かべていた。 「誰に聞いたのだ…言え!」 「分かりませぬ」 「言うんだ!」 「分かりませぬ」 永田様は私の首元に当てた小太刀を、更に強く当てた。 痛い…っ…。 「戸の向こう側は、いつも私の悪口で、賑やかいので、誰かなどとは分かりませぬ」 私は、ほろほろと涙を流しながら言った。 「誰がどうのよりも、永田様に好きと言って貰えたならば、私は例え奥方様やお子様が居られても、貴方様の側で貴方様のお言葉通りに、受け止めていけれるのです…」 好きなのです…。 ただ、それだけなのです。 色々と貴方様の居ない間に考えました。 貴方様と私の身分の差も。 貴方様の御家族の事も。 それを知らせてはくれなかった、貴方様の心中も。 私を此所に置いておく深い意味も。 貴方様を好きで堪らない愚かな自分の事も。 貴方様の、たった一言で、愚かな自分の心中が報われるのでございます。 好きという…たった一言で…。
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