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また女が消えた。
これで、ついにこの村では私一人の女となってしまった。
「おまえは外へと出てはいけないよ」
母さまはそう言って、外の様子を警戒して戸を閉めた。
「私は捕らわれたりはしない」
何故なら、男の格好をして、男のような振る舞いをして生活をしているからだ。
「米をかついでおれば、女などと誰が思うものか。母さまは心配しすぎだ」
私は、わらじの紐を結び直して、引き戸を開けて不安気な母さまに言った。
「必ず帰ります」
重い米を年老いた母さまになどに、かつがせる訳にはいかない。
父は寝たきり、弟は嫁を捕らわれて助けた時に殺された。
ここの山のてっぺんから見える都では、こんな悲惨な出来事が毎日起こっているだなんて、知る事もなく。
きらびやかに華やかな生活を、貴族たちは送っているのだな。
人とは成り上がると、あわれなものだ。
見なくてはならぬ事、知らなくてはならぬ事が、何一つ目には入らぬのだから。
林道を下った場所に、百姓小屋がある。
そこで僅かな米を買う。
…あっ…蝶が…。
蝶か…まるで私と一緒に歩きたいのかと思うくらい近くを飛ぶ。
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