一、捕らわれぬ

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一匹…また一匹と…蝶の数は増えて、私を囲む。 「優雅だね、おまえたちは」 ヒラヒラと羽を揺らして飛ぶ蝶に、私は人差し指を差し出した。 すると、とまった。 「素直な子…可愛い模様だ」 しばらく私は蝶たちに囲まれながら、林道を下っていた。 「アハハ、肩にとまりたいの?…いいよ、ここにおいで?」 私は着物の襟元をずらした。 「おいおい!そこの女!止まれや!」 と、大柄の汚い男たちが目の前に現れた。 まさか、山賊か!? 「そこを退いてくれませぬか、俺は急ぎの用がある」 私は低い声で男の素振りをする。 「いや、どかねぇな」 「親分、コイツ今ぬけぬけと俺だと言いやがったぞ?」 「おまえ、女だろ?」 「女ではない」 「バカ言うな、こんなに蝶を引き連れて歩いてりゃ間違いなく女だろうが」 「女はもう、この辺りの村には一人も居ませんよ」 ……。 「そうかい、そうかい」 山賊の親分とやらは、唾を吐いて私を睨み付けた。 まずいな、女だと気が付かれているかも知れない…。 逃げ道は塞がれている。 やむを得ず、斜面を横滑り落ちて逃げ回るしかなさそうだ。 「調べろ」 その言葉を聞いた瞬間から、斜面を一気に滑り落ちて、私は思いっきり走った。
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