154人が本棚に入れています
本棚に追加
一匹…また一匹と…蝶の数は増えて、私を囲む。
「優雅だね、おまえたちは」
ヒラヒラと羽を揺らして飛ぶ蝶に、私は人差し指を差し出した。
すると、とまった。
「素直な子…可愛い模様だ」
しばらく私は蝶たちに囲まれながら、林道を下っていた。
「アハハ、肩にとまりたいの?…いいよ、ここにおいで?」
私は着物の襟元をずらした。
「おいおい!そこの女!止まれや!」
と、大柄の汚い男たちが目の前に現れた。
まさか、山賊か!?
「そこを退いてくれませぬか、俺は急ぎの用がある」
私は低い声で男の素振りをする。
「いや、どかねぇな」
「親分、コイツ今ぬけぬけと俺だと言いやがったぞ?」
「おまえ、女だろ?」
「女ではない」
「バカ言うな、こんなに蝶を引き連れて歩いてりゃ間違いなく女だろうが」
「女はもう、この辺りの村には一人も居ませんよ」
……。
「そうかい、そうかい」
山賊の親分とやらは、唾を吐いて私を睨み付けた。
まずいな、女だと気が付かれているかも知れない…。
逃げ道は塞がれている。
やむを得ず、斜面を横滑り落ちて逃げ回るしかなさそうだ。
「調べろ」
その言葉を聞いた瞬間から、斜面を一気に滑り落ちて、私は思いっきり走った。
最初のコメントを投稿しよう!