五、思い知らされる事実

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戸の向こうから声がした。 「図々しくも、まだあの女は居座っておるわい」 「厚かましいのも限度を越えておる」 女たちの妬みの声。 「これ、おまえたち。あの女の事を悪く言うて、それを永田様が知りでもしたら」 と、男たちが小さな声で言う。 鷹の銀は、もう私にも慣付いていて、飛び回り疲れると、永田様と同様に私に、背を撫でてくれと、近寄ってはしばらく離れないでいた。 「そうじゃ、あの御方の事柄に触れてはならぬ」 「しかし、あんな汚らわしい遊女のような者に、食事を運ぶわたくしたちのお気持ちもお察し下さいませ」 「お部屋に閉じ込めておられるから、何一つ言えやしませんもの…、もぉ悔しくて」 わざと、大きな声で私に聞こえるように女たちは言っている。 私は銀を撫でながら思った。 銀…、あぁは言われても、私は永田様に命じられておるのだから、どうしようもないよね? 銀は、気持ち良さそうに私を見つめる。 「宮中からあの御方と御子様が戻られるまでの辛抱じゃ」 あの御方と御子様がって……? 「そうじゃ、さすればあんな女はもう用済みで、この世から消されるわい」 そんな……。 「それだけの価値しかない女に、つべこべ言って、おまえたちが先に消されては困るだろ?」 「はい」 「与えられたお役目を果たしなされ」 「はい」 と、男たちの去る足音の後に、引き戸をバタンと叩かれた。 私は驚いて足が崩れた。
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