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「そこで、何をしておるのだ!」
叫ぶ声に山賊たちが、辺りを見渡す。
そして、恐ろしく驚いた。
弓の矢が、私の頬をかすめて、山賊の頬に傷をつけて、木に突き刺さったのだ。
「痛ぇな!誰だ!」
誰なの、こんなに真っ直ぐに矢を飛ばせるだなんて。
「きさまらは一体、何者だ!」
橙色の狩衣の色男と、薄緑色の狩衣の冷たそうな男が、馬の手綱を引っ張り、おりてやって来た。
「手荒な事を。その手を離しなさい!」
橙色の狩衣の男が、山賊達に怒鳴り付ける。
「これはこれは、都にいらっしゃる方々が、こんな山里に何の御用です?」
山賊の親分が聞く。
「…狩りだ」
薄緑色の狩衣の男は、やはり冷たそうな声で言った。
先ほどから、飛び回っていた鷹がバサバサと、その薄緑色の狩衣の男の肩に止まった。
「それは奇遇で。私どもも都に住む貴族の方々のために、狩りをしてましてね…」
「…女狩りというのだろ?」
薄緑色の狩衣の男は、淡々と表情一つ変えずに、山賊を見下して話を続けた。
「なんとも話の早い方でございますな」
女狩り?!
「女狩りとは不埒な!」
橙色の狩衣の男は、怒り口調で言った。
「そんなものを、我々貴族のためだなどと、嘘偽りを抜かしておると、罰を受けるぞ!」
「まぁ、待て、後藤」
「侮辱ではないか、永田」
「なぁ、山賊どもよ。どうせ女狩りをして貴族に売り飛ばすのならば、その女を今、俺に売ってはくれまいか?」
この男は、山賊に真っ向から話を付けている。
「永田様と申されましたね?貴方様の御身分はどれ程のものかと?」
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