一、捕らわれぬ

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山賊の親分の言葉に、永田という男は懐から袋を取り出した。 「身分は、右大臣様の直属の元で勤めておる、と言ったら理解できるか?」 そして、その袋を山賊に投げ捨てた。 「それは、またなかなかの御身分で」 「金など、おまえにくれてやる。女を渡せ」 と、永田という男は右手を差し出した。 山賊の親分は、手下に合図をして、私はやっと解き放たれた。 私はゆっくりと脅えながら、その差し出された手の方へと行った。 手下は袋の中を確認すると、すぐに親分に報告した。 「こ、こんなに」 「おまえたちでは、なかなか持てぬ程の額だ。まぁ好きに使え」 後藤という男が見張る中、私は永田という男の手を握る。 山賊たちは金に、うつつを抜かしていた。 「大丈夫か?」 「はい…」 「おまえは女なのだから、用心しなくてはいけないよ」 「はい…」 私は馬に乗せられて、山賊たちの横を通り過ぎた。 「家はどこだ?送り届けてやるぞ?」 後藤という男が、さっきと違い陽気な口調で言ってきた。 「実は百姓小屋にお米を買いに行く途中で、山賊に狙われてしまって」 「そうか、じゃあまずは用を済ませねばな」 「すいません」 貴族なのに、貴族らしくない。 こんなに、親身になってくれる貴族もいるのだと正直、驚いた。 まともにこんな自分とは、全くもって身分の違う相手と話をした事がないため、少し緊張していた。
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