【act1 : コート】

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 それは突然だった。 「…寝る」  魔王さまはコートを放ってよこした。あたしは慌てて抱き止める。むき出しの腕に羽のファーが擦れた。そのくすぐったい感触で、時間はまた動き出した。  朝だ。  部屋には、もう色がついている。魔王さまはベッドに潜り込んでそっぽを向いた。あたしも部屋の隅でコートにくるまって丸くなる。  あたしは猫。  あたしは何も喋らない猫なんだ。  今までに無い、不規則な心臓の鼓動。ベッドに横たわっている気高い少年を強く意識した。  それでも、「日常」のリズムは無理矢理あたしの目を閉じさせる。  朝日を瞼の裏に感じながらあたしはまどろみに落ちていった。 【act1 fin.】
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