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それは突然だった。
「…寝る」
魔王さまはコートを放ってよこした。あたしは慌てて抱き止める。むき出しの腕に羽のファーが擦れた。そのくすぐったい感触で、時間はまた動き出した。
朝だ。
部屋には、もう色がついている。魔王さまはベッドに潜り込んでそっぽを向いた。あたしも部屋の隅でコートにくるまって丸くなる。
あたしは猫。
あたしは何も喋らない猫なんだ。
今までに無い、不規則な心臓の鼓動。ベッドに横たわっている気高い少年を強く意識した。
それでも、「日常」のリズムは無理矢理あたしの目を閉じさせる。
朝日を瞼の裏に感じながらあたしはまどろみに落ちていった。
【act1 fin.】
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