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待ち合わせ場所のいつも私や姉が遊ぶ公園の前には たかくんのおばちゃん、たかくん、そして知らない男の人がいた。 母もたかくんのおばちゃんも背は高かった。 父が小さいわけではないが、 母と父が並べば、母の方が、高いんじゃないかと思うくらい。 そんな母よりも頭一個分は高い男の人。 幼い私からすると、巨人だった。 その男の名前は思い出せない。 だけど、覚えている。 たかくんのおばちゃんのようにぎらぎらした瞳で私を見ていた。 ニヤニヤと笑う顔は父の笑った顔とは全く違っていた。 わたしはその男が怖かった。 母と親しげに話すその男が。 たかくんも、下を向いていた。 表情は、よく、わからなかった。 私が怯えているのは誰から見ても一目瞭然で、 男は必死に当時のお笑い芸人のネタをやったりしていたが、 私もたかくんも、笑顔になることはなかった。 それを見て笑うたかくんのおばちゃんと母が、なんだか急に遠くの人みたいに感じた。
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