31人が本棚に入れています
本棚に追加
ぽちゃん
水が私を飲み込んだ音が響く。
周囲の木々に木霊していき、『人形』の孤独さが余計に目立っていた。
ぽちゃん
『人形』の歩みは止まらない。
感情の一切を殺して、進める。
ざぶっ、ざぶっ
遂に腰まで来た時、不意に思ってしまう。
…『人形』として最期を迎えるのに、着ているのは学校の制服なんて
…私は最後の最期まで『人間』なの?
…けどもう、『人形』でも助からない
そう頭に浮かんだ私は、なぜかあたりを見回していた。
でも、人どころか無機物も私を見棄てたのか、木々が嘲笑うだけ。
それに、いくら聖夜といっても、神様も『人形』に慈悲は与えてくれない。
ー人間じゃなくてよかった
ーだって人間なんて醜いから
そうして、現実を否定するように『祈』と名付けられた『人形』は、最後の1歩を自ら動かした。
それはごみ箱に堕ちるかのように、この世から跡形なく消えた。
最初のコメントを投稿しよう!