-a story with a little toy-

3/19
前へ
/19ページ
次へ
ぽちゃん 水が私を飲み込んだ音が響く。 周囲の木々に木霊していき、『人形』の孤独さが余計に目立っていた。 ぽちゃん 『人形』の歩みは止まらない。 感情の一切を殺して、進める。 ざぶっ、ざぶっ 遂に腰まで来た時、不意に思ってしまう。 …『人形』として最期を迎えるのに、着ているのは学校の制服なんて …私は最後の最期まで『人間』なの? …けどもう、『人形』でも助からない そう頭に浮かんだ私は、なぜかあたりを見回していた。 でも、人どころか無機物も私を見棄てたのか、木々が嘲笑うだけ。 それに、いくら聖夜といっても、神様も『人形』に慈悲は与えてくれない。 ー人間じゃなくてよかった ーだって人間なんて醜いから そうして、現実を否定するように『祈』と名付けられた『人形』は、最後の1歩を自ら動かした。 それはごみ箱に堕ちるかのように、この世から跡形なく消えた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加