-a story with a little toy-

4/19
前へ
/19ページ
次へ
「…ぇ、…てよ」 水面に雫が垂れるように、音が響く。 「…ぇ、…ってば」 そう、私は水に包まれながら聞いている。 そんな私を、優しい温度の声が抱擁した。 けれど、その温度が僅かに冷たくなる。 「……ないと、…わよ」 声が全身に響いている上、意識が曖昧なため、言葉として認識できない。 ただ、最後の一言が耳についた。 「………貴女を、殺してあげるわ」 …どういうこと? なんて思う暇はなくて、首もとから温かみが広がっていく。 そして、 「…ッ…あッ……!」 ギリギリと、ドラマの効果音のように軋んでゆく音が、現実に聞こえてくる。 胴体と頭が分裂できそうなほどの力で、私の首は絞められている。 ただ何故か、その力が強くなるにつれて、私の思考は明瞭になっていった。 …そう、私は、死んだ …でも、この手は? また、不思議なことに、絞められてた状況でも言葉を出すことができた。 死んでも変わらない、『人形』らしい無機質な音であったが。 「…あなたは、誰なのですか?」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加