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神様に興味のない坂下くんだけど「石」には人一倍興味がある。石についての知識とか愛はかなりなものだ。
瑪瑙に翡翠にアメジスト。
アンバー、スピネル、蛍石。
デザートローズに鶏冠石。
ラピスラズリに花崗岩。
部屋には石がいっぱい。ざらざらしたのにごつごつしたの、つるつるしたのにきらきらしたの。本棚には石の本。入門書みたいなのから難しそうなのまで。
石のカケラの入ったガラスの小箱、それを手のひらに乗せて見つめる伏し目は、うっとりと夢を見ているようにとろけていて。私は思わず後ろから彼の頬をつねる。
「何石なんか見てるのよー、何なのよー、私を見なさいよー」
むっとした私を見て彼は困り眉になって、少しうろたえてきょときょとして、それから床にちんと正座して、頭を下げて一言。
「すいません容子さん。僕は石が好きなんです」
何かその様子がおかしくて、私はぷっと笑ってしまった。笑いながら、言わなくてもわかるよ、と言ったら、大袈裟にのけぞって驚いた。
「なっ、なぜわかったんですか?!容子さんはエスパーですかっ?!すごいですね!」
その大袈裟が面白可愛くて。
素直に可愛いって呟いちゃったら、今度は耳まで真っ赤になっちゃって。
「綺麗な目でそんなことを言わないでください……照れます」
だって。
照れた坂下くんの伏し目、可愛い伏し目。私に翻弄された瞳。それに満足して、私はにんまり微笑んだ。そして彼の頭を撫でた。愛い奴め、と。
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