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夏なんてくそくらえ。そう俺が吐き捨てたのは八月一日、準決勝の日の事だった。
その日は朝から随分と蒸し暑かった。正直気が狂いそうになるレベルには暑かった。
「…おはよー」
「おはよう」
寝汗が酷かったからとりあえずシャワーを浴びて下に降りれば既にシャワーを浴びて朝ごはんを用意し終わったらしい澪が優雅にアイスティーを飲んでいた。
「なんか飲み物無い?」
「冷蔵庫に麦茶あるぞ」
「…それでいいや」
適当なコップに氷を放り込んで麦茶を注ぐ。一気に飲み干せば身体中に冷たさが染み渡った。
「今日もまずそうな朝ごはんだね」
「食べなくてもいいんだぞ」
「すみません」
もう一杯麦茶をついで、俺は焦げたししゃもを口に突っ込む。
「俺将来絶対癌になる」
「安心しろ。その前にコレステロール過多で脳梗塞だ」
そっけなく言い放った澪がぐっさりと俺に視線を突き刺してくる。
「昨日、夜中にカップラーメン食べたでしょ」
「うぐっ…」
何故バレたし。証拠は確実に隠滅したはずなのに。
「さっきごみ箱にカップラーメンのごみ入ってたよ」
「…不覚……!」
ちゃんと片付けておくんだった。俺がまさに後悔先に立たずという言葉を噛み締めていると澪が呆れたようにため息をついた。
「あんたアスリートの自覚あるの?」
「…一応」
「自己管理ちゃんとしなさいよ。エース様々なんでしょ?」
「あい」
少し固いご飯を口に押し込んで麦茶で流し込んだら「よく噛んで食べ
ろ!」と怒号が飛んできた。
俺のお母さんでもないのになんで一々突っ掛かってくるんだよ!
「応援、行くから」
精々頑張りなさいよ。
そう吐き捨てて澪は二階に上がっていった。
(…また、応援来てくれるんだ)
嬉しい。自然と頬が弛む。
「頑張ろ」
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