いち

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さざ波、夕暮れ。 遠くに聞こえるのはこの砂浜で遊んでいた子供たちの声で。 僕は脇に座る彼女の気配を感じながら仰向けに寝そべっていた。 「終わったなぁ……」 「終わったね……」 そう繰り返してくる彼女との会話は続く事は無く。もう一度遠くの子供たちの声が響く。 「約束、守れなかったな」 「ううん、いいんだよ」 夏の大会に優勝し、全国に連れて行くという彼女との約束は最後まで果たされることは無かった。 「私、知ってるよ」 そういって立ち上がる彼女を視界で追って体を起こす。 「野球部の中で誰よりも、がんばってたのは貴方だもん。大丈夫。私は分かってるから。約束を守ってくれようとがんばってくれた。私はそれだけで嬉しいよ。 さぁ、いこう?」 そういって砂浜を後にする彼女の座っていた場所には『すき』という指文字が書かれていたのを僕は見ない振りをした。
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