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暗闇の中、鉄臭い匂いの中で那由多は目を覚ます。
後ろに回され、掛けられた手錠。足に付けられた拘束具は自分が囚われの身となった事を改めて感じさせられる。
しかし、隣に見えるのは最終目標である二宮金次郎像であり、ここが攻略の最終目的地であることをあらわしていた。
捕虜に囚われの身であり、人質であると認識させると同時に、劣等感を植え付ける事で自白を促すって所かしら?あの男がやりそうな事だわ。
と、そこまで思考を巡らせた時、目の前にある扉が開く。それは何処にでもありそうな普通の扉だったが、思わせぶる様に、じらすようにゆっくり、ゆっくりと開いていく。
この演出まであの男の考えそうな事だ。
「今までも何度か誘拐されそうになった事はあったけど、まさかMHRR内で親族に誘拐されるとは考えておりませんでしたわ。正お兄様」
ドアの向こうに立つ姿は無人島の一件で命達を苦しめた人物であり、白羽家の次男である白羽正。その人だった。
「やぁ、那由多。気分はどうだい?」
彼はまるで舞台に立っているように両手を広げ、大きい身振り手振りで感情を表現していく。
それは白羽家に生まれた時から運命付けられた『見られる立場』という者の動きだ。
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