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??「隼人よ…」
声の低い品のある老人はある青年を『隼人』と呼んだ。
隼人「はい。御呼びで御座いましょうか?じじ様」
隼人と呼ばれた青年はその老人を『じじ様』と呼んだ。
老人「呼ばれた理由はわかるか?」
隼人「いえ…」
隼人は顔を上げずに答えた。
老人「あの娘が…あの娘たちが年齢に達した。おそろくそろそろ自覚をする頃だろう。何分(なにぶん)あの島は只でさえ訳ありの島だ」
隼人「………」
老人「由姫が行った島…初音島」
隼人「…!」
隼人は『由姫』と云う言葉にわずかに反応した。
老人「あの娘の娘たちを…護ってやってくれ」
隼人「俺の力が役に立つのなら…」
老人「お前は守護家の人間…この『葛木』に仕える守護家の人間だ」
隼人「………」
葛木の老人「お前は守護者の…いや、鬼の血を引く一族。守護者の中でも最も力を持つ」
隼人「……はい」
葛木の老人「今がその時だ。役目を果たす時が来た…助けられた恩を果たすのだ、いいな?」
隼人「わかりました…由姫様のご息女……この俺が護ってみせます…鬼の守護者の名に懸けて」
隼人は顔を上げながら言った。
葛木の老人「では、行け…桜が咲き誇る初音島へ」
隼人「はい」
そして、青年は長年暮らしていた里を旅立った…
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