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オトシモノ
ここはどこだろう。
ずいぶん長い間眠っていたようで、グワングワンと嫌な感じに鳴り響く頭に顔をゆがめながら私は周りを見渡した。
すぐに目に入ったのは沢山の白。
どこを見てもシロ、シロ、シロとなんとも色の無い世界だ。
しかし、そこは不思議と怖いと思う事はなかった。ただ、ただ不思議な空間だと思ったのだ。
私は未だに地味に痛む頭を抱えながらもこの白い空間を壁伝いに歩いていった。
それはまるで長い長い回廊。
窓もなければ、柱も扉も無い、ひたすら道が続く長い廊下。
ただ私は無心に歩いた。
まるで何かに導かれるように私は歩いたのだ。
暫く歩いて、真っ白な世界に小さなシミのようにポツンと違う色が視界に止まった。
私はそれに引き寄せられるように駆け寄った。
すると、その小さなシミのようなものは私のほうに振り返るように動いたのだ。
そう、それは人間だった。
見た感じ性別は男。背丈は私より少し高い。
服装は派手ではなく、寧ろ地味な部類にはいるだろうがそれは男にとてもよく似合っていた。
雰囲気はとても穏やかそうで、男の顔は何ていうか眠そうでぼんやりとした感じである。
男は足音で私の存在に気付いたようで、ぼんやりとした眼をいっぱいに開いて私を見た。
なんていうか、かなり驚いているという事だけは分かった。
そうだ、もしかしたら彼はここがどこなのか知っているのかもしれない。
とりあえず仲間は一人でも多い方がいい。
そう判断した私は彼に話しかける事にして口を開けた。
「*******ッ!?」
しかし私の口から音が出る事はなかった。
私は何度も口を開いて言葉を出そうとするが、それが音として鼓膜を震わせる事は一度も無かった。
突然の事に理解できない私は馬鹿の一つ覚えみたいにひたすら口を動かしているのは非常に滑降だったのだろう。
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