オトシモノ

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しぐれは信用できないとでも言うように少し不満そうな表情を顔に浮かべたが、それ以上追求することなくまた先へと足を進めた。 私も置いてはいかれまいと足を動かそうとするが、足は思うように動かない。 まるで何十キロの重りを付けられているように酷く重く感じられたのだ。 仕方が無い、少し休憩してから追いかけよう。 そう思ってしぐれに先に行くようにジェスチャーするもしぐれは首を縦に振ることはなかった。 数秒前とは別人のようにただ私をじっと見つめ、早く歩けとでも言うように追い立てるような視線を送っていた。 あまりにも鋭い視線に私は無意識に息を呑み、思うように動かない足を必死に奮い立たせた。 このまましぐれと分かれてはいけない、座り込んではいけない。 そう何となく私は感じたのだった。 あまりにも多い荷物だったので、こう右も左も分からない中無意味な荷物を持ってうろつくのは危険だと判断した私達は、邪魔にならない道端にそれぞれの荷物を置いて足を進める事にした。
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