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暫くしてしぐれがとある映像の前で足を止めた。
しぐれはその映像を食い入るように見つめていた。
一体何が映っているのだろうと覗き込めば、映っていたのは携帯ゲーム機を持った一人の中学生ぐらいの少年と降り注ぐいくつもの大きな鉄柱。
少年はただそれを呆然と見つめていた。
そして次に映ったのは、大量のアカと山のように重なる鉄柱。
隣の映像に視線をずらせば、病室で眠る先ほどの少年と泣き崩れる家族だろう姿だった。
しぐれはその映像を小さく震える身体を押さえ込みながら、真っ白に色をなくした顔で静かに見つめていた。
私はわけもなくしぐれに手を伸ばすが、そこで止まる。
一体私に何が出来るのだろうか。
言葉も無いのに、私はなにをする事ができるというのだ?
けど・・・。
私はそこまで考えて、小さく手を握り締めて軽くしぐれの肩を押した。
しぐれは案の定、とても驚いたとでも言うように私を見つめ返し、私はそれに笑って返した。
一人じゃないよ。
たったそれだけの事だけど動くという事意外に出来ない今、それぐらいしか私には出来ないのだ。
何もしないよりずっといい。
するとしぐれは小さく笑って私の膝裏に蹴りを入れると、そのままスタスタと歩を再会させた。
立ち直ったとは言いがたいが、いいほうに転がったようだ。
私の選択は間違いではなかった事にコッソリ胸を撫で下ろした。
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