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待合室のソファーに深く凭れ掛かり、煙草を吸っていると、意識が飛びそうになる。
眠いのか。
疲れているのか。
とにかく、怠かった。
華凛はいつも始発を待ち、帰路につく。
さっさと動いて、慌てて箱を片す必要がない。
大概、送迎屋が待機しているので女たちは個々に送ってもらうのだが。
「あ、与野さん、ちょっといいですか?」
髭の男が誰かに名前を呼ばれ、反応する。
水の入った灰皿に、火がついたままの煙草を落として返事をした。
「なんだ?」
黒服に呼ばれて、待合室から髭の男・与野が出ていった。
待合室に一人残された華凛も、灰皿に煙草を落下させて立ち上がる。
「………部屋、片すかな…。」
仕事で既に乱れてしまった髪を、更に乱すように手で掻く。
有線も消され、箱までの廊下はもう静かだ。
華凛の歩く足音だけが響く。
箱の中を片す。
使用済みの大量のタオルは、物置にあるクリーニング用の籠に投げ入れる。
ゴミ箱には大量の汚れたティッシュ。
透明のビニール袋を外して、口をきつく縛る。
華凛の私物が置いてある棚からバッグを手に取り、財布に金を押し込んだ。
箱を見渡す。
バッグとティッシュの入ったビニール袋も持って、箱を出た。
カウンターの所の大きなゴミ袋に、ビニール袋を捨てる。
戸締まりをする為に、鍵を持った与野が華凛を待っていた。
「ご苦労さん。さ、帰るか。」
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