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  窓から入る柔らかな光。 淡い色のカーテンを優しく風が揺らす。 深い眠りについていても、おかしくない時間帯。 ソファーで目を閉じたはずの華凛は、まだ眠っていなかった。 こんなゆったりと流れる時もあるんだ。 夜を生きる女には、あまり縁のない時間帯。 太陽が高い位置にあるうちに出歩くことは、ほとんどない。 寝ているから。 この日はたまたま起きていたが。 暖かい窓辺に身を任せて、太陽の光を浴びる。 それだけのこと。 なのに、知らないことのようで。 相変わらず、目は虚ろ。 ぼーっと、空を眺めている。 青い、青い、空。 白い、白い、雲。 そうか。 空は、黒くないのか。 ここのところ、黒い、夜の空しか見たことがなかった。 朝に帰るときでさえ、空を見上げることなど、なかった。 夜なら、月と星があるのに。 今は、空は青く、雲が白く、太陽が見える。 同じ空なのに、不思議だ。 いや、見えていないだけ。 昼も、星はある。 目に、見えないだけで。 目に見えないモノ。 何を見るでもなく、空を眺め、華凛はまた頭の中で様々な考えを巡らせていた。
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