Behind ‐ 背後に ‐

25/25
前へ
/155ページ
次へ
 やがて全ての姿を現した少女に、ヨシュアは不覚にも時間を忘れてしまったように固まった。  あのクレドが傍に置くくらいなのだからある程度の美少女なのだろうと踏んでいたが、それよりもずっとずっと綺麗で可憐な容姿と雰囲気だったのだ。  まだまだ幼さは残るが、それでも少女は綺麗だった。 「……ヨシュア?」  不愉快なだけだったはずの声が、やけにヨシュアの鼓膜に響いた。  ヨシュアはハッとなり、慌てて口を開いた。 「キリエ、で、イイんだな」  改めて少女の名前を口に出すと、何故か無性に気恥ずかしい気分になった。 「うん! はじめまして。これからよろしくね」  スッと差し出された右手に、ヨシュアはほんの少しだけ戸惑うが、すぐにそれを一瞥して「ふん」とそっぽを向いた。 「……あくしゅ、しないの?」  少し寂しそうに言うキリエは、残念そうに呟く。 「しねーよバカか。オラ、付いて来いよ」  キリエは何故自分はバカと言われたのだろうとキョトンと首を傾げて、当の本人を見上げる。  ヨシュアはクルリと自分に背を向け、顔だけこちらに振り返っている。 「どこいくの?」 「どっかそこらへん」  そう聞いて、キリエはクレドの言い付けを思い出すが、もう既に一つ破ってしまっている。  誰が来ても決して相手にしてはいけないこと。  でも本より破るつもりでいたのだから、この際ヨシュアに付いて行ってみるのも良い。  クレドが帰ってくる前に戻れば問題ないのではないだろうか。  キリエは甘すぎる考えを信じ、その窓の向こうへと足を踏み出した。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加