Crime ‐ 犯行 ‐

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 それにヨシュアには手段はまだまだある。  何も一対一だけが戦いじゃない。  要は勝てばいいのだ。  どんな手を使っても勝てば官軍負ければ賊軍。  もとより正義なんてもの、フォレストでは何の役にも立たない。  ヨシュアはバタフライナイフを構えたまま、片手をマントの中に入れ、拳銃を持った。 「動くな!」  そしてまたこちらに突っ込もうとしたクレドに向かって言い放ち、石段で蹲っているキリエに銃口を向けた。 「なっ……」  案の定クレドはピタリと体を止めた。  クレドがキリエを見殺しにすることはまずない。 「一歩でも動いたら、アイツの頭をブチ抜く」  クレドはここで初めて自分は何をしているのだと激しく後悔する。  こんな男の相手をする前に何をすべきだったのか、考えただけで自己嫌悪した。  キリエを人質に盗られたら、もうクレドにはなす術がない。  例え80%の勝機があっても少しでも彼女が犠牲になる確率があるなら、決してクレドは動かない。  最も大切な人が、自分の犠牲になることは恐ろしいのだ。  クレドはシースナイフを地面に落とし、ヨシュアの方に蹴った。  ナイフは地面を滑って綺麗に彼のもとまで辿り着いた。  何の抵抗も躊躇も見せない潔さに、ヨシュアは笑う。 「クレ、ド……?」  キリエはようやく少し落ち着いたのか、体を少し起き上がらせ、クレドを見る。  クレドはそれに微かに笑って、ヨシュアに視線を戻した。
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