Crime ‐ 犯行 ‐

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 その笑みがどういう意味なのかキリエにはわからず、ただヨシュアがこれから自分達に良くないことをすることだけがわかった。  自分に向けられた銃口と、クレドに向けられた鋭く尖った刃。 「やめてヨシュア……クレドをきずつけないで」  キリエはヨシュアが先程自分にした行為に、恐れを抱いた。  あんなにあからさまな殺意を向けられたのは生まれて初めてだったのだ。  クレドがキリエに汚いモノを見せたくないのと同じで、キリエもまたクレドには怖い思いをしてほしくなかった。  優しい時間のまま、キリエの中には昔のクレドが生きているから。  ヨシュアはチラリともキリエを見ず、クレドを見据えたままその声を耳を右から左に流す。 「……いくら自己回復を持ってても、サスガに首か心臓に突き刺したら逝くよなァ」  ヨシュアはハンマーを親指で引き起こし、標準はキリエに定めたまま、クレドに近付いていった。  余所見をして本当にキリエを撃てるのか、そんな疑いはクレドの中にはない。  ヨシュアがクレドの戦闘を高く評価しているのと同様、クレドもヨシュアの腕の正確さは知っている。  世界最大の盗賊団の若頭が、止まったままの標的を撃ち外すわけがない。  用心深いクレドだからまだ暗器を隠し持っている。  しかし恐らくヨシュアもそのことに気付いている。  暗器は相手に少しでも気取られては使えない。  それに使った瞬間ヨシュアはキリエを撃つだろう。  クレドは降参を意をするため、軽くを両手を挙げた。  自分が死ぬのはいい。  けれども自分が死んだ後、キリエはどうなる。  殺される可能性の方が高い。  一歩一歩こちらに歩いてくるヨシュアを何でもないように見ながら、頭の中ではぐるぐるとキリエだけでも助かる方法を考える。  何が何でもキリエだけは助からなければ、護らなければ、クレドの存在意義が、すべてが壊れてしまう。
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