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クレドの話が終わると、キリエは緊張したように口を引き締めズボンを両手でギュッと握りしめた。
クレドと目を合わせようとはせず、何か必至に言葉を紡ごうとしている。
先程のキリエが起こした奇妙な力は、間違いなくパンドラの一種であったことは、クレド既にわかっている。
すっかり治癒のパンドラ一つだけだと思っていたクレドにとっては驚きの対象以外何でもない。
クレドもパンドラを二つ持っているが、二つ以上のパンドラを持つ人間は自分以外知らなかった。
世界中探しても極僅かだろう。
その中に二人は含まれている貴重で重宝されるべき人間であった。
「あの……えっと……その」
キリエはチラリとクレドを見やるがすぐに目を逸らして、口をごもごもと動かす。
完全な拒否とは言わないが、キリエが事情を言いたくないのは見てわかる。
そもそもそうでなければ、最初の段階でキリエは嬉しそうにクレドにパンドラがあると報告していただろう。
わたしパンドラなんだよ、すごいでしょ。と。
それをしなかったのはキリエにも後ろめたいことがあるからだ。
キリエはフランツ家にいた時のことを思いだす。
クレドに本当のことを言ってしまったら嫌われてしまうのではないか。
こんな自分を気味悪がるのではないか。
自分を見る人々の目が怖くて悲しくて、何度も泣いた。
本当は誰一人傷つけたくないのに、キリエにはそれができないのだ。
まだ精神が不安定でパンドラの制御も未熟なため、キリエには自分の力を抑えてコントロールすることがとても難しいことだった。
「……キリエ?」
気付けばキリエはポロポロと涙を零していた。
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