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また泣き出してしまったキリエを前に、今度こそは聞き出そうと決意したクレドの意志は、いとも簡単に崩れ去ってしまった。
目の前で好きな娘に泣かれてしまっては、この男には話を促すことはできない。
甘やかすことが好きなわけではない。
だけどクレドがキリエに対して強気にでられないのは事実であった。
「キリエ、やっぱり……」
またでいいから。
そう言おうとしたクレドであったが、キリエの方が泣きながら首を横に振った。
「言う……クレドに、……はなすっ」
クレドはしゃくり上げてまともに喋れる状態ではないだろうキリエの背を優しく摩る。
クレドは小さく頷いて、小さな背中を摩り続けた。
数分嗚咽を漏らして泣いていたキリエだったが、徐々に落ち着いたのか涙でぐちゃぐちゃになった顔をティッシュで拭いた。
泣いて多少はすっきりしたのか、少しばかり覚悟を決めた顔をしていた。
一方のクレドも何を聞いても取り乱したりしないように、覚悟を決めた。
「……クレドならもうわかってるとおもうけど」
キリエは恐る恐る震える唇を開いて、自分よりも大きな手を離れていってしまわないように握り締めた。
それに応えるように、クレドも握り返す。
「わたし……ぜんぶで――5つのパンドラをもってるの」
5つ同時にパンドラを宿す人間。
それがキリエであった。
聞いたこともないそのパンドラに数に、クレドは目を見開き驚愕した。
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