第二章 Whisper ‐ 内緒話 ‐

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 ――俺以外の前で、パンドラを使うな  以前クレドとそう約束したキリエは、無意識か、ヨシュアに殺されそうになった時もパンドラを使おうとしなかった。  しかし、これもまた無意識に、クレドが殺されそうになった時は咄嗟にパンドラを使ってしまった。  加減ができなかったとは言え、彼女のパンドラ能力値は周囲を圧倒するものだ。 「それで、他にはどんなパンドラがあるんだ?」  クレドはやんわりと握った手を解き、キリエの隣に腰かける。 「さっきヨシュアにつかったのは、"ねんりき"っていうパンドラらしいの」  恐らくキリエは念力の意味を把握していないであろう。  遠隔操作も、マリオネットのように人間を操ることも造作もない力。 「それとね、後は火がでるやつと、氷をつくるやつと、風をふかせるやつ」  ポンポンと、まるでどうでもないように言うキリエだが、クレドはすぐさまそれらの力の種類が、いかに危険なものかと考えた。  炎、氷、風。  パンドラの使い道によっては人を殺すことも、とても簡単なことだ。  火災を起こすことも、生物を凍り付けにすることも、暴風を巻き起こすことも。  もし、これがキリエではなく、私利私欲に塗れた他の悪党だったら?  間違いなく世界は崩落の道を辿っただろう。  治癒の力しかないと思っていた彼女は、とんでもない爆弾を抱えていた。
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