第二章 Whisper ‐ 内緒話 ‐

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 彼女にとっては、力の暴走が怖かった。  自分を護るつもりでもし誰かを必要以上に傷付けてしまったら、そう考えるとパンドラを使うのが怖いのだ。  けれどもそんなものは拙[ツタナ]い理想でしかない。  理想を掲げようが現実を見ようが、殺されそうになったら自分で自分を護るしかない。 「キリエ」 「……なぁに?」 「大丈夫だよ。もしキリエが自分を止められないなら、俺が止めるから」  キリエの望みならば、何でも叶えようではないか。  彼はキリエのためならば苦労や苦痛など微塵も感じないだろう。 「俺は無のパンドラがあるから、大丈夫。絶対止めるから」  キリエは数秒丸い目を瞬かせる。 「とめられるの?」 「多分ね。頑張るよ」  無のパンドラで他のパンドラを相殺するには、クレドの力が相手の力を上回っていないと不可能になる。  恐らくキリエの能力値は高いだろう。  それでも、キリエを止めることができるのは、自分だけ。  ならばやるしかない。  それにこの役目を他人にとられるのも、不愉快極まりない話だ。 「クレド。ありがとう」  この笑顔が見られるなら、なんだって可能に変えてみせよう。
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