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彼女にとっては、力の暴走が怖かった。
自分を護るつもりでもし誰かを必要以上に傷付けてしまったら、そう考えるとパンドラを使うのが怖いのだ。
けれどもそんなものは拙[ツタナ]い理想でしかない。
理想を掲げようが現実を見ようが、殺されそうになったら自分で自分を護るしかない。
「キリエ」
「……なぁに?」
「大丈夫だよ。もしキリエが自分を止められないなら、俺が止めるから」
キリエの望みならば、何でも叶えようではないか。
彼はキリエのためならば苦労や苦痛など微塵も感じないだろう。
「俺は無のパンドラがあるから、大丈夫。絶対止めるから」
キリエは数秒丸い目を瞬かせる。
「とめられるの?」
「多分ね。頑張るよ」
無のパンドラで他のパンドラを相殺するには、クレドの力が相手の力を上回っていないと不可能になる。
恐らくキリエの能力値は高いだろう。
それでも、キリエを止めることができるのは、自分だけ。
ならばやるしかない。
それにこの役目を他人にとられるのも、不愉快極まりない話だ。
「クレド。ありがとう」
この笑顔が見られるなら、なんだって可能に変えてみせよう。
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