Recovery - 治癒 -

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「……っつ……」  あれからどれくらい経っただろうか。  ヨシュアは負傷した背中が尋常でないくらい痛み、動けずにいた。  呼吸をするにも激痛が走り、いっそやめてしまおうかと思ってしまうほどだ。  月や星が、この空だけは綺麗な町に浮かんで、まるで自分を馬鹿だと笑っているようである。  こんなことならばもっと綿密に計画を立てておくんだったと、ヨシュアは数日前の自分に辟易した。  あまりにも上手く話が進んでいくものだから、はしゃいでいたのか。  決して油断していたわけではないが、とにかくクレドがこの場に居合わせるとはとんだ番狂わせだ。  ヨシュアはふーっと細く小さく息を吐き、腹立たしく舌打ちをする。  癇癪を起こしたキリエが脳裏に浮かび、更にイライラは増すも、あの記憶を思い出すと彼女を心底恨んで憎んで殺せるわけがなかった。  もうヨシュアの中にはキリエをただの利用道具としては認識されていない。  このフォレストにいる、誰よりも可哀想な人間だ。  腐りきったはずの自分が、キリエに同情しているのだとわかり、笑い飛ばしたくなった。  今骨に罅なんて入っていなければそうしたいところだ。  この自分が、今更他人に同情するなんてどうかしているとしか思えなかった。 「はは……だっせ」  満足に作戦を遂行もできず、その上少女一人に怪我を負わされ動けないなんて。  こんな姿をトルガー盗賊団の者に見られたらとんだお笑い者だ。
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