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あの元恋人の少女の記憶を見た時だった同情なんてしなかった。
それほどヨシュアにとってキリエの記憶は衝撃的だったのだ。
もしキリエでなければ同情はしなかったかもしれない。
キリエが無知で無垢であるがため、他の誰よりも滑稽で可哀想だった。
少年の目には、そう映った。
「――若!?」
その時、聞き慣れた野太い声が少年を呼んだ。
「どうしたんだよ、こんな所でくたばってらしくねえ」
顔を上げて確認するまでもない。
ヨシュアの右腕でもあるガラハドだ。
大方ヨシュアの帰りが遅いから探しに来たのだろう。
ヨシュアがずっと小さい頃から一緒にいるからか、ガラハドは彼を子ども扱いしたいらしい。
ガラハドは心配そうに、というよりは驚いたような顔をしてヨシュアの前にしゃがんだ。
トルガー盗賊団でも指折りの強さを誇る若頭が、今にも死にそうな顔をしているのだ。
心配よりも驚愕が勝ってしまうのも頷ける。
「骨……何本か逝った」
「おいおい、一体何があったんだ。最近こそこそしてると思ったらコレかい」
「るせ……さっさと運べ」
目立った外傷はないが、内側がやられているならば仕方がないと、ガラハドは納得し、なるべく骨に響かないように、ヨシュアを逞しい背におぶった。
「ってぇ、な……もっと、ゆっくり歩け」
喋るのにも一苦労だと言わんばかりな途切れ途切れな話し方が痛々しいったらない。
「わかったよ。全く若はやんちゃが過ぎるな」
ヨシュアは自分よりも大分広い背中に安心して全体重を任せ、舌打ちした。
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