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ふうーと細長く煙が肺から吐き出すと、闇夜に白い煙がよく映えた。
今ヨシュアは自分のように悠長に煙草を吸う余裕もなく激痛に悩まされているところだろう。
そう思うと無性に罪悪感に苛まれて、苦く笑って煙草を砂の地面に放って踏みつけた。
――その時、ガラハドはいち早く気配を察知した。
すぐさまベルトにつけてある拳銃を取り出すとセーフティレバーを解除した。
そして相手を確認する間もなく標準を合わせた。
二人の男女に。
男は少女の背に隠し、庇っている。
その少女は怯えたような表情をしてガラハドの持つ黒い拳銃に見入っていた。
「……もしかしてお前さんか。若をやったのは」
煙草の煙よりも余程綺麗に闇夜に映える髪の毛で、ガラハドは相手を誰かを理解した。
何度も見たことのある容姿は相も変らず、憎たらしい程優れている。
トルガー盗賊団には、残念ながら彼のような美男子はいない。
クレドならばヨシュアにあの重症を負わせたのは癪だが納得はできる。
自己回復のパンドラを持ち不死身でありながらも、高い戦闘技術と知恵を持つ男だ。
一昔前の山賊のように、次はトルガー盗賊団を潰す気なのかと、咄嗟に思った。
「ち、ちがうの……! クレドは、なにもわるくないの」
すると、背に隠された少女が泣きそうな声で、そう訴えてきた。
クレドは今にも乗り出しそうなキリエの腕を離すことはなく、ただ彼女を見ていた。
まだ拳銃を構えたままのガラハドは、賊にとっては恐怖の対象でしかないクレドを警戒している。
後ろの少女もまた、何かしらの脅威を持っているかもしれない。
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