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そのため今は誰もいない裏口からヨシュアの部屋に行き、その部屋の前でガラハドが見張りをする。
他の団員を敬遠するため、そしてもしもヨシュアとクレドが何らかの理由で争うことになった時、止めに入るために。
『見張りと見せかけて、背後から俺たちを襲わない確証がない』
と、しつこく警戒し続けるクレドに、自分が何よりも大切にしているペンダントを、この間だけ渡した。
そのロケットには、若い女の写真が入っていた。
『死んだ妹の形見だ。俺がお前さん等を裏切ったら壊せばいい』
あのクレドがたかがこんなもので納得するだろうかと考えたが、彼はあっさりとそれを了承し、ペンダントを受け取った。
クレド自身も、昔キリエに同じものを渡したからか、頷いてしまった。
それにガラハドを疑っているわけではない。
ただ敵のアジトにキリエを連れて行く以上は、確証が欲しかっただけだ。
裏口からアジトに足を踏み入れると、木の独特の匂いがした。
「今アイツ等は一階で飲んでるから、こっちには来ねえと思うがな」
ガラハドを先頭に軋む木製の階段をゆっくり上る。
言う通り一階の一室からはやけに騒がしい話し声が聞こえる。
自分達の頭がやられたというのに、こういうところは図太く無神経なのだ。
しかしそれは、そういう方がヨシュアにとっていいからである。
自分の体調ひとつで気分を変えられては気分が悪いのだ。
二階につくと、すぐそこにヨシュアの部屋のドアがあった。
ドアにはナイフで彫ったのか、"Yohoshua"と不恰好な文字があった。
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