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チラリと見遣ったクレドは小さく頷いた。
それを確認したガラハドは3回ノックして、「若」と低い声で呼び掛けた。
「……入るぜ、若」
ガラハドは返事がなかったことに困ったような笑みを浮かべ、ゆっくりとドアノブを回す。
中にいたヨシュアは不機嫌そうな顔をして、入り口に立つガラハドを見るも、その後ろにいる人影を不信に思い更に顔を顰めた。
機嫌の悪い自分に自ら接触してくる馬鹿なんて、ガラハド以外にいなかったからだ。
「……オイ、誰だ」
ギロリと隠れている人影を睨みつければ、ガラハドは宥めるように穏やかな表情をしてみせた。
番犬よりもいち早く違和感を察知するヨシュアの警戒心の強さは、ここにいるクレドにも匹敵する。
そんなヨシュアに、ガラハドは大きな自身を少し横にずらし、隠れていた二人の姿を露わにした。
その瞬間ヨシュアは一気に殺気を溢れさせた。
電気も付けずに、月明かりと蝋燭[ロウソク]の灯りだけが頼りのこの部屋で、ヨシュアが今どんな顔で彼等を見ているのかは見えないが、このただならぬ雰囲気で簡単にわかってしまう。
誰よりも信頼している自分の右腕が、何故か敵ともとれる相手を引き連れているのだ。
異様な組み合わせに、ヨシュアは内心、ガラハドが自分を裏切るはずはないと困惑し、ならばクレドが何らかの形でガラハドに取り入ったのかなど、様々な可能性に思考を巡らせた。
すぐ傍らに置いてあった拳銃を右手にとり、ハンマーを引き起こす。
カチャリと、あまり宜しくはない音に、ガラハドは誤解を生まぬように説明を始めた。
「若、今コイツ等は敵じゃねえ。そうピリピリしなさんな」
いつものような軽い調子で笑うガラハドだが、今ヨシュアが怪我に苦しんでいるのも、そこにいる小さな少女が与えた痛みが原因である。
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