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キリエは拙い思考回路でヨシュアの言葉を理解していった。
傷付けてしまった相手の傷を癒そうとしている自分が何故いけないのかはわからずとも、ヨシュアにとってはそれが嫌なことなのだと。
「テメェもよく殺されかけた相手に、んなコト言えんなァ」
ヨシュアは話し続けることで体が痛み額に脂汗を浮かばせるが、ハッと嘲笑い、口を止めはしなかった。
「オレは偽善だとか同情だとか、クソみてェなもんに、ヘドが出んだよ」
相変わらず体の芯にまで根付いた口の悪さに、ガラハドは小さく溜め息をつき、ヘアバンドをつけた頭をガシガシと掻く。
クレドだけがその溜め息を聞き取ったが、聞こえないふりをしてキリエとヨシュアの遣り取りに顔を顰める。
「ごめん、なさい……」
自分が何を言われているのかよくわからないが、怒られているのだとわかり謝るキリエと、何故殺されかけた当人が謝るのだと思ったクレドとガラハド。
そんなキリエの様子を見て、ヨシュアは舌打ちをした。
ヨシュアはキリエ存在自身に嫌悪し苛立っているのかと言われれば、それは少し違った。
彼女のあの記憶を見て嫌いだと言った同情もしたし、これ以上の攻撃もしてはいけないと本能的にブレーキだって掛けた。
ならば何が気に食わないのか。
それはキリエが自分に向ける罪悪感である。
プライドが高いヨシュアは、キリエに怪我を負わされた事実もその怪我を治そうとしている親切心も気に食わない。
何故殺されかけた相手に良心を向けるのかも理解できないし、"ただのバカ"としか思えない行動もムカつく。
無垢過ぎる故に湧き上がる罪悪感など、ヨシュアにとっては苛立ちにしか変換されない。
「ノータリンのツラなんか見たくもねえんだよ」
最後に「失せろ」と吐き捨てられ、とうとうキリエは泣きたくなった。
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