第三章 Lad‐少年‐

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 ここ数年は寡黙で冷静なクレドしか見ていないからか、そうまでも形振[ナリフ]り構わず必死になれるのかと驚く。 「で、その客のご機嫌取りか?」 「そうねぇ。まあアンタに相当入れ揚げてる客だから、今回のことも許してくれるんじゃない?」 「どうだか。"クレドの女"って聞いて雰囲気が変わったからな。刺しに来るんじゃないの」  面倒くさそうに重い溜め息を吐いて、クレドは何の躊躇いもなくジュリナのデスクに浅く腰かけた。 「ちょっと、これ以上顧客潰さないでよ?」 「先に手を出してくるのはいつも客なんだ。仕方ないだろ」  危険物は排除しなくてはならない。  特に今のクレドには護るべきものがいる。  護るものを持ってしまった時、本人の意思に関係なく自然とあらゆる枷が増えていく。  しかし、キリエには精神が不安定ながらも自分を護ることのできる力がある。    その事実はクレドに安堵を与えたことだろう。 「ま……アンタが潰されちゃあ本末転倒だから、結局は任せるけれど」  大のお気に入りのクレドに、ジュリナは甘い。  他の男娼が顧客を潰そうものなら許しはしないだろうが、彼だけは特別であった。
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