第三章 Lad‐少年‐

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 珍しく午後からの仕事はなく、ジュリナの説教を聞き終えると館から出た。  クレドは昼下がりの陽射しに目を伏せ、もう随分夏に近付いたものだと蒸し暑そうに襟巻きを掴んで小さく扇ぐ。  数秒そうしてから、スピカにいるキリエを迎えに行く。  この前の一件からキリエは素直にスピカに行くようになった。  クレドに対して罪悪感を持っているのか、あの時の恐怖を二度と味わわないようにか。  恐らくはその両方である。  そのことに気付いているも、「キリエのやりたいようにやればいいんだよ」と言うことはできない。  その一言がどれほど無責任な言葉かをわかっているからだ。
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