19人が本棚に入れています
本棚に追加
そこだけ空間の違う自動ドアの前に立つと、静かに頑丈そうなドアが左右に開いた。
クレドの存在にいち早く気付いたのはもちろんキリエで、トーマの隣からこちらに駆けてきた。
「おかえりなさいクレド!」
いつものように愛らしく飛び付いてきた小さな体を受け入れると、デスクに頬杖をついたトーマが呆れたように笑う。
「ただいま、いい子にしてた?」
「してたよ! ね、トーマ」
キリエはくるりとトーマに振り返り、自信満々の顔で同意を求める。
「うん。キリエちゃんは誰かと違って素直でいい子だったよ」
ニコリと微笑んだトーマの言わんとすることはわかるが、それもスルーして、クレドはキリエの頭を軽く撫でた。
いつものように微笑ましいその光景に、トーマは少しだけ口角を下げ、それからまた少し上げた。
「そうやってると、本当の兄妹みたいだね」
ポロリと無意識に出た言葉だった。
トーマはじっと二人を見比べては、童話に出てくるお菓子の家に辿り着いた兄妹を連想していた。
何処までも二人で手を繋いで、窮地に追いやられても二人で脱出し、いつまでも仲睦まじく過ごしていくのだろう。
理由も根拠も、充分にある。
二人の相思相愛ぶりには時たま、虫歯でもできてしまうのではないか、そんなことを考えてしまう程甘いものである。
相思相愛の恋人にも見えないことはないが、最愛の妹とそれを一心に守る兄の図が一番しっくりくる。
「ガーネットのみんなが家族だから、わたしとクレドもきょうだいだよ」
ね、と言われ、クレドは満更でもなさそうに頷いた。
兄妹だと恋愛はできないんだけどね、という野暮やセリフは閉じ込め、トーマは「そっか」と笑った。
最初のコメントを投稿しよう!