第三章 Lad‐少年‐

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 そこだけ空間の違う自動ドアの前に立つと、静かに頑丈そうなドアが左右に開いた。  クレドの存在にいち早く気付いたのはもちろんキリエで、トーマの隣からこちらに駆けてきた。 「おかえりなさいクレド!」  いつものように愛らしく飛び付いてきた小さな体を受け入れると、デスクに頬杖をついたトーマが呆れたように笑う。 「ただいま、いい子にしてた?」 「してたよ! ね、トーマ」  キリエはくるりとトーマに振り返り、自信満々の顔で同意を求める。 「うん。キリエちゃんは誰かと違って素直でいい子だったよ」  ニコリと微笑んだトーマの言わんとすることはわかるが、それもスルーして、クレドはキリエの頭を軽く撫でた。  いつものように微笑ましいその光景に、トーマは少しだけ口角を下げ、それからまた少し上げた。 「そうやってると、本当の兄妹みたいだね」  ポロリと無意識に出た言葉だった。  トーマはじっと二人を見比べては、童話に出てくるお菓子の家に辿り着いた兄妹を連想していた。  何処までも二人で手を繋いで、窮地に追いやられても二人で脱出し、いつまでも仲睦まじく過ごしていくのだろう。  理由も根拠も、充分にある。  二人の相思相愛ぶりには時たま、虫歯でもできてしまうのではないか、そんなことを考えてしまう程甘いものである。  相思相愛の恋人にも見えないことはないが、最愛の妹とそれを一心に守る兄の図が一番しっくりくる。 「ガーネットのみんなが家族だから、わたしとクレドもきょうだいだよ」  ね、と言われ、クレドは満更でもなさそうに頷いた。  兄妹だと恋愛はできないんだけどね、という野暮やセリフは閉じ込め、トーマは「そっか」と笑った。
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