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スピカから出ていった二人を見送ってから、トーマはまたデスクにつき、一番上の引きだしをあけた。
そこらに散らばった数枚の写真を見る。
「兄妹、ねえ……」
家族、兄妹、姉妹、血縁、絆。
トーマはそんな類の言葉が、反吐が出るほど嫌いだった。
一般人が腐った汚物を見て嫌悪するそれと同じだ。
彼にとってはそれらは全て汚物で、ごみ箱にポイと捨てるのが当然なのだ。
見せ掛けのこの優しさや人の好さなど、他人を都合良く欺くための気まぐれと商売物でしかないのだ。
トーマは気まぐれであった。
ふらりと寄っては消える猫のように。
次から次へと花に移る蝶のように。
そして赤にも青にも黒にも白にも、どんな自分も完璧に演じることのできる道化だった。
あの面影が残る写真の人物を見て、トーマは目を細め手に取った。
「あの女にそっくりだねえ……」
歪な笑みを浮かべながら、ライターをポケットから取り出して、その写真に赤を燈した。
「早く死ねばいいのに」
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