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お情け程度に舗装された土道の両脇には、出店がギッシリと詰まっておりクレド宅までそれが途切れることはない。
出店がなくなっても、すぐにホテルやら3、4階程ある建物が出てくるのだ。
キリエはそんな風景を見るのが好きで、いつもいろんな出店を物欲しそうに見ている。
しかしスピカという優れた店がある以上、クレドは何処の不良品かもわからない所で買うつもりはなかった。
「ねえねえ。わたしもお買い物しちゃだめ?」
繋いだ手を少しだけ引っ張り、覗[ウカガ]うようにクレドを見上げた。
まるで初めてのお願いのようにドキドキとしているキリエの胸中など、彼にはお見通しだ。
「何か欲しいものがあるの?」
「うん!」
「へえ、どれ?」
優しく聞いてやると、キリエはパアッと笑顔になり一つの出店を指差した。
そこへ目を向けると、どうやら女性向けの洋服屋のようで、人相の悪い年配の女が生気のない顔で椅子に座っていた。
洋服屋と名乗るだけ名乗り、店主の洋服は所々破けたり煤[スス]けたりと、あまりいい恰好ではない。
以前キリエに買った洋服はこれからの夏でも着られるものだが、新しいものが欲しくなったのだろうか。
「服が欲しいの?」
ならばスピカで買った方が質もいいし種類も多い。
しかしキリエはふるふると首を横に振った。
「ちがうよ! あれ、あのうさぎのおにんぎょう!」
「人形?」
あれあれ!と少しはしゃいで小さな指が差す先を辿ると、端の方にキリエの身体半分程はありそうなウサギの人形が座っていた。
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