第三章 Lad‐少年‐

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 娼婦の姿が人混みへ消えると、キリエはクレドから手を放してあの子どもの顔を覗き込んだ。 「だいじょうぶ? こわかったでしょ?」  覗き込まれた子どもは、一見性別がわかりにくい程の中世的な容姿をしているが、骨ばった細い骨格から少年だと判別できる。 「た、助けてくれてありがとう……」  少年は声変わりもしていない高い声で礼を言うと、クレドの腕からそっと離れキリエに向き合った。 「あの……僕、ここに人捜しで来て。噂通り危ない所なんだね」  少年は目を泳がせながらごもごもと言う。  癖一つない真っ直ぐな金髪が、弱い風に小さく揺れた。  空のように澄んだ穢れ一つない瞳に、肌触りのよさそうな光沢のある洋服は、余所者だと語っているようなものだったが、やはり少年はフォレストの住人ではないようだ。  キリエよりも年下であることは明白だが、何分彼女自身も随分幼く見えるから二人が並んでも同い年に見える。  しかし年下との接触が嬉しいのか誇らしげにお姉さんぶるキリエは見ていて微笑ましいものだ。  本人に言っては拗ねてしまうからクレドは胸中におさめておく。 「ねえクレド! この子、おうちにとめてあげよう?」 「は?」  一人愛しの想い人を見詰めていると、唐突に「どうしてそうなった」というようなことを言い始めた。  一方の少年も呆気に目を真ん丸にしているではないか。 「だってまだ人みつかってないんでしょ? 一日でみつかるかもわからないよ。 それにここにおうちないから、たいへんでしょ?」  ね? と言って少年をじっと見つめ、諭す。  少年は図星だったらしく、困ったようにキリエから目を逸らして戸惑っている。
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