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クレドの悪友とも呼べるトーマは、22歳の美男子で、泣かせた女は数知れず。
金色の柔らかそうな髪の毛に、優しく垂れた目尻、その中心は蒼く澄んでいる。
色白の胸元に映えるよう垂れた銀のペンダントは、自由人の彼らしい羽根の形を象[カタド]っている。
服から文房具、食料品、医薬品、武器。何でも一通り揃った店は、フォレストでも売り上げナンバーワンの店だ。
その証拠にトーマの身に着けているアクセサリーやラフそうな洋服は、フォレストの住人では手に入れられない値段の物ばかりだ。
そのトーマに変に気に入られたクレドは、やたらと構ってくるこの色男に世話になることが多い。
スピカの奥にはトーマが住む自室が一つあり、そこのシャワールームを仕事の合間に貸してもらうのが日常になった。
シャワーをさっと浴びてから勝手にトーマの服を借りて表に出ても、トーマは何も言わずにクスリと笑う。
「そーだ。最近やたらとお前を嗅ぎ回している奴がいるらしい」
思いついたというようにトーマの口から出た言葉に、クレドは表情を変えずに首にペンダントを下げる。
「へえ……また女を寝取られたとか言う、頭の悪い男か?」
「いいや? 違う」
トーマは大層面白そうに笑いを噛み締める。
それにクレドは呆れたように溜め息をついて、彼に向き直る。
「何を面白がっている。ハッキリ言え」
あまり興味がないのか、無関心そうにクレドは自分の肩程まである髪の毛をハーフアップにして、細いゴムで3重にして結ぶ。
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