Whereabouts ‐ 行方 ‐

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 珍しくもない要求に返事をしてから、クレドはシャルレに背を向けてそこから歩き出そうとした。  しかし、突然人混みの中から飛び出してきた小さな身体が、勢い良くクレドに向かって衝突しそうになった。  目敏く、瞬時にその身体を跳ね返そうとしたが、それが被っていたボロ切れのようなフードが風で髪の毛を現した瞬間――彼は目を見開いた。  さっきスピカの色男が言ってたいた噂の"阿婆擦れ"かと思ったのだ。  だが実際見えたのは、昔よく撫でた覚えのある、クリーム色の柔らかそうな長い髪の毛――。  クレドは確信も持てないまま、その小さな身体を受け入れた。  ドンッと突進してきた身体。  受け入れてからハッとなったが、自分の身体が刺された感触はなく、ぶつかってきた衝撃だけがある。 「クレド!」  隣のシャルレは、いつもと違う彼の反応に驚いたように声を上げる  いつもの彼ならば、間違いなくその身体を突き飛ばして自分の身を守っただろう。  彼女はそんな彼の反応を怪訝そうに眉を顰め、その小さな身体を突き飛ばそうとした。 「やめろ!!」  彼は褐色の細い腕をすぐさま掴んで放すと、腕の中にいるそれの両肩をそっと掴んだ。 「――キリ、エ……?」  自分の手と声が震えるのがわかる程、クレドは動揺する。
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